cheepub 0.7.0 → 0.7.1
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- checksums.yaml +4 -4
- data/README.md +7 -0
- data/Rakefile +2 -0
- data/cheepub.gemspec +2 -1
- data/lib/cheepub/cli.rb +1 -1
- data/lib/cheepub/converter/cheelatex.rb +23 -0
- data/lib/cheepub/generator/latex.rb +7 -0
- data/lib/cheepub/markdown.rb +2 -1
- data/lib/cheepub/templates/style.css.erb +215 -0
- data/lib/cheepub/version.rb +1 -1
- data/lib/cheepub.rb +6 -0
- data/misc/conv_entity.rb +29 -0
- data/samples/jlreq-readme-ja.md +389 -0
- data/samples/sangetsuki.md +69 -0
- data/samples/thelastleaf.md +1 -0
- data/samples/thelastleaf_ja.md +1 -0
- data/samples/thelastleaf_ja_luatex.md +137 -0
- data/samples/yume_juya.md +2 -0
- data/samples/yume_juya_luatex.md +419 -0
- metadata +23 -4
@@ -0,0 +1,389 @@
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author: Noriyuki Abe
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title: jlreq
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license: Copyright 2017-2018, Noriyuki Abe. (2-clause BSD license) https://github.com/abenori/jlreq/blob/master/LICENSE
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# jlreq
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## これは何?
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[日本語組版処理の要件](https://www.w3.org/TR/jlreq/ja/)の実装を試みる[LuaTeX-ja](https://osdn.jp/projects/luatex-ja/wiki/FrontPage) / pLaTeX / upLaTeX用のクラスファイルと,それに必要なJFMの組み合わせです.
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## 提供されるもの
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クラスファイルjlreq.clsと,横書きLuaTeX-ja用のJFMであるjfm-jlreq.luaが用意されています.また,縦書きのJFMやpLaTeX / upLaTeX 用のJFMを生成するいくつかのスクリプトがあります.
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## インストール
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`make`で必要なJFMを生成してください.その後,
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* *.tfm -> $TEXMF/fonts/tfm/public/jlreq
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* *.vf -> $TEXMF/fonts/vf/public/jlreq
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* jfm-jlreq.lua jfm-jlreqv.lua -> $TEXMF/tex/luatex/jlreq
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* jlreq.cls -> $TEXMF/tex/latex/jlreq
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と配置します.`make install`とすると,$TEXMF=$TEXMFHOMEとしてこのコピーを行います.
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## 使い方
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通常通り
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```latex
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\documentclass{jlreq}
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```
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とします.これで横書きのarticle相当の文書クラスとなります.エンジンは自動判定されますが,指定する場合はクラスオプションに`platex/uplatex/lualatex`のいずれかを渡してください.縦書きにするには`tate`オプションを渡します.また,reportやbook相当の文書クラスとするには,それぞれ`report`や`book`オプションを渡します.たとえば,縦書きの本を作成するには
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```latex
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\documentclass[tate,book]{jlreq}
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```
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とします.
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その他,`oneside / twoside / onecolumn / twocolumn / titlepage / notitlepage / draft / final / openright / openany / leqno / fleqn`というよくあるオプションを受け付けます.
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標準的な文書クラスと同じように中身を書くことができますが,次のような命令が追加 / 拡張されています.
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### `\jlreqsetup`
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設定用命令です.プリアンブルでしか使えません.文書に対する設定は,クラスオプションとして行うか`\jlreqsetup`を通じて行うかします.どちらで設定するかは設定項目によります.
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+
### `\section`
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+
`\section*[running head]{見出し文字列}[副題]`というように,通常の書式に加えて副題を受け付けられるように拡張されています.その他,`\part`(articleのみ),`\chapter`(book/reportのみ),`\subsection`,`\subsubsection`も副題を受け付けます.
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### `abstract`環境
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プリアンブルにもかけるようになっています.プリアンブルに書かれた場合は,`\maketitle`とともに出力されます.二段組の場合は,段組にならず概要を出力することができます.
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+
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+
### `\sidenote`
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この命令は傍注の幅が正の時にのみ定義されます.デフォルトの基本版面ではこの幅は0に設定されています.従って`\sidenote`は定義されません.後の基本版面の設定を参考にしてください.
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+
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+
`\sidenote`は傍注(縦組みの場合は脚注)を出力します.内部では`\marginpar`を使っています.デフォルトでは`\footnote`と同様の書式となりますが,`\jlreqsetup`で`sidenote_type=symbol`が指定されている場合,その書式は`\sidenote{該当項目}{注}`となります.たとえば
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```latex
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+
刊行できる\sidenote{原稿}{印刷などの方法により……}を入手する仕事である.
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```
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とします.後の説明も参照してください.
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+
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### `\endnote`
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+
後注を指定します.`\footnote`と同様の書式です.デフォルトでは,注自身の出力は見出し直前に行われます.この動作は`\jlreqsetup`に`endnote_position`を渡すことで制御できます.詳しくは後の注関係の説明をご覧ください.また`\theendnotes`を実行するとその場に出力をします.
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+
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+
### `\warichu`
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割注を出力します.行分割位置などは自動で計算されます.(複数回のコンパイルが必要.)`\warichu*`ではこれらの位置を手動で指定できます.書式は
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```
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\warichu*{(一行目前) & (一行目後)\\ (二行目前) & (二行目後)...}
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```
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です.`&`が省略されている場合は自動で調整されます.
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+
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### `\tatechuyoko`
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縦中横を出力します.`\tatechuyoko{<文字列>}`とします.縦書きでない場所で使うとエラーになります.
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+
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### `\jafontsize`
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+
和文フォントサイズを指定する`\fontsize`です.クラスオプションで`jafontscale=0.9`とされている場合,`\fontsize{9pt}{15pt}`とすると和文フォントのサイズは`8.1pt`となりますが,`\jafontsize{9pt}{15pt}`とすると`9pt`となります.(欧文フォントサイズは`10pt`となる.)なお,第二引数は`\fontsize`の第二引数と全く同じです.
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+
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### `\ `
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全角空白(U+3000)一文字からなるマクロです.和文間隔を挿入します.LuaLaTeXでは` `のみでも和文間隔を入力できます.
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### その他
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* ルビや圏点は提供されません.[PXrubrica](https://github.com/zr-tex8r/PXrubrica)またはluatexja-ruby(LuaLaTeX,LuaTeX-jaパッケージに付属)を使うと良いかと思います.
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+
* 日本語組版処理の要件2.3.2.dによれば,二段組の最後のページの各段の行数は揃えることが望ましいとされていますが,この処理は行われません.`nidanfloat`パッケージを使い,
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```latex
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+
\usepackage[balance]{nidanfloat}
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```
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+
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とするとこの処理が行われます.ただし,最終ページでの`\newpage`や`\clearpage`が正しく動作しません.詳しくは`nidanfloat`パッケージのマニュアルをご覧ください.
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## 各種設計
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設計はクラスオプションまたは`\jlreqsetup`によりkeyval形式で行います.以下では次の用法を使います.
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+
* `[A/B]`:AまたはBです.`[A/B/C]`等も同様.
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+
* `<寸法>`:TeXが認識する寸法です.簡単な式(`10pt+10pt`のような)を使うこともできます.また,クラスオプションでは,場合によっては次のような特殊な値を使うこともできます.(これらはpLaTeX / upLaTeXではもとから利用可能ですが,LuaLaTeXでも利用可能なように処理されています.)`\jlreqsetup`内のような場所では,常に`\zw`や`\zh`により全角幅が記述できます.以下,たとえば`Q`が利用可能な場合は`<寸法;Q>`のように記述します.
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+
- `Q`:0.25mmと解釈されます.
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+
- `zw`, `zh`:全角幅として解釈されます.
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+
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+
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+
### 基本版面
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クラスオプションです.
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+
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+
* `paper=[<紙サイズ名>/{<寸法>,<寸法>}]`:紙サイズです.紙サイズ名はa0からa10,b0からb10,c2からc8を指定できます.B列はJIS B列です.また,`{<横>,<縦>}`と直接寸法を指定することもできます.
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100
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+
* `fontsize=<寸法;Q>`:欧文フォントサイズ.デフォルトは10pt.
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101
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+
* `jafontsize=<寸法;Q>`:和文フォントサイズ.
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102
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+
* `jafontscale=<実数値>`:欧文フォントと和文フォントの比(和文 / 欧文).`fontsize`と`jafontsize`が両方指定されている場合は無視される.デフォルトは1.
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103
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+
* `line_length=<寸法;zw,zh>`:一行の長さ.デフォルトは字送り方向の紙幅の0.75倍.実際の値は一文字の長さの整数倍になるように補正されます.
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104
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+
* `number_of_lines=<自然数値>`:一ページの行数.デフォルトは行送り方向の紙幅の0.75倍になるような値.
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105
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+
* `gutter=<寸法;zw,zh>`:のどの余白の大きさ.
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106
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+
- `tate`無指定時は奇数ページ左,偶数ページ右の余白
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107
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+
- `tate`指定時は奇数ページ右,偶数ページ左の余白
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108
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+
- `twoside`が指定されていない時は,常に奇数ページ扱いで余白が設定される
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+
* `head_space=<寸法;zw,zh>`:天の空き量.デフォルトは中央寄せになるような値.
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110
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+
* `foot_space=<寸法;zw,zh>`:地の空き量.デフォルトは中央寄せになるような値.
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111
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+
* `baselineskip=<寸法;Q,zw,zh>`:行送り.デフォルトは`jafontsize`の1.7倍.
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112
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+
* `linegap=<寸法;Q,zw,zh>`:行間.
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113
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+
* `headfoot_sidemargin=<寸法;zw,zh>`:柱やノンブルの左右の空き.
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114
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+
* `column_gap=<寸法;zw,zh>`:段間(`twocolumn`指定時のみ).
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+
* `sidenote_length=<寸法;zw,zh>`:傍注の幅を指定します.
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+
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+
### 組み方
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+
クラスオプションです.
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+
* `open_bracket_pos=[zenkaku_tentsuki/zenkakunibu_nibu/nibu_tentsuki]`:始め括弧が行頭に来た際の配置方法を指定します.それぞれ段落開始全角折り返し行頭天付き(デフォルト),段落開始全角二分折り返し行頭二分,段落開始二分折り返し行頭天付きを意味します.
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+
* `hanging_punctuation`:ぶら下げ組をします.
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+
### 注関係
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+
`\jlreqsetup`で指定します.
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+
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+
* `reference_mark=[inline/interlinear]`:合印の配置方法を指定します.`inline`にすると該当項目の後ろの行中に配置します.`interlinear`を指定すると該当項目の上(横組)または右(縦組)に配置します.
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126
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+
* `sidenote_type=[number/symbol]`:傍注と本文との対応の方法を指定します.`number`が規定で,注の位置に通し番号が入り,それにより対応が示されます.`symbol`とすると,注の位置に特定の記号が入り,また注がついている単語が強調されます.
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127
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+
* `sidenote_symbol=<記号>`:`sidenote_symbol=symbol`の時に,注の位置に入る記号.デフォルト*
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128
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+
* `sidenote_keyword_font=<命令>`:`sidenote_symbol=symbol`の時に,注のついている単語のフォント指定.デフォルトは無し(強調しない)
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129
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+
* `endnote_position=[headings/paragraph/{_<見出し名1>,_<見出し名2>,...}]`:後注の出力場所を指定します.`headings`は各見出しの直前(デフォルト),`paragraph`は改段落の際に出力します.また,`endnote_position={_chapter,_section}`とすると,`\chapter`と`\section`の直前に出力します.
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130
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+
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131
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+
### キャプション
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+
図表のキャプションを`\jlreqsetup`で変更できます.
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+
* `caption_font=<命令>`:キャプション自身のフォントを指定します.
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+
* `caption_label_font=<命令>`:キャプションのラベルのフォントを指定します.
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135
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+
* `caption_after_label_space=<寸法>`:ラベルとキャプションの間の空きを指定します.
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136
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+
* `caption_label_format=<書式>`:ラベルの書式を指定します.`caption_label_format={#1:}`のようにします.`#1`が「図1」のような番号に置換されます.
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137
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+
* `caption_align=[{left/right/center/bottom/top/<環境名1>=<位置指定1>,<環境名2>=<位置指定2>,...}]`:キャプションの場所を指定します.`caption_align=left`のように指定します.`caption_align={center,table=right}`とすると,`table`のみ右,そのほかは中央配置となります.
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138
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+
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139
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+
### 引用
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+
`quote / quotation / verse`環境の挙動を`\jlreqsetup`で指定できます.
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+
* `quote_indent=<寸法>`:字下げを指定します.デフォルトは2zwです.一行の長さが文字サイズの整数倍になるように調整されます.
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142
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+
* `quote_end_indent=<寸法>`:字上げを指定します.デフォルトは0zwです.
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143
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+
* `quote_beforeafter_space=<寸法>`:前後の空きを指定します.`quote_beforeafter_space=1\baselineskip`とすると一行あきます.
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144
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+
* `quote_fontsize=[normalsize/small/footnotesize/scriptsize/tiny]`:フォントサイズを指定します.
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145
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+
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146
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+
### 箇条書き
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147
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+
`\jlreqsetup`で指定します.
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148
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+
* `itemization_beforeafter_space=<寸法>`:箇条書きの前後の空きを指定します.`itemization_beforeafter_space={i=<寸法>}`とするとトップレベルのみに設定を行います.`itemization_beforeafter_space={0pt,i=10pt,ii=5pt}`とすれば,レベル1の箇条書きに10ptを,レベル2のそれに5ptを,それ以外には0ptを設定します.
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149
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+
* `itemization_itemsep=<寸法>`:項目同士の空きを指定します.
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150
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+
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+
### 定理環境
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152
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+
`\jlreqsetup`で指定します.
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153
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+
* `theorem_beforeafter_space=<寸法>`:定理環境の前後の空きを指定します.
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154
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+
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155
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+
## 見出し
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156
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+
見出しの設定は,`\Declare***Heading`という命令で行います(***には見出しの種類に応じた文字列が入る).書式はすべて
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157
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+
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158
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+
```
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159
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+
\Declare***Heading{<命令名>}{<レベル>}{<設定>}
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160
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+
```
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161
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+
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162
|
+
となっています.また,`\New***Heading`,`\Renew***Heading`,`\Provide***Heading`も同時に用意されます.それぞれ
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163
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+
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164
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+
* `\New***Heading`:指定した名前の命令が既に定義されている場合はエラー.
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165
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+
* `\Renew***Heading`:指定した名前の命令が定義されていなければエラー.
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166
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+
* `\Provide***Heading`:指定した名前の命令が定義されていない場合に限り見出し命令の定義が行われる.
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167
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+
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168
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+
となっています.
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169
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+
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170
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+
### 扉見出し
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171
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+
`\DeclareTobiraHeading`で作成します.通常のクラスファイルにおける`\section`等と同じ書式の命令ができます.設定は以下の通り.
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172
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+
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173
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+
* `type=[han/naka]`:`han`だと半扉見出しを,`naka`だと中扉見出しを作ります.
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174
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+
* `pagestyle=<ページスタイル>`:見出し箇所のページスタイルを指定します.
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175
|
+
* `label_format=<書式>`:ラベルを出力する命令を指定します.たとえば`label_format={第\thechapter 章}`のように指定します.
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176
|
+
* `format=<書式>`:実際に出力する書式を指定します.`format={\null\vfil {\Huge\bfseries #1#2}}`のようにします.`#1`はラベルに,`#2`は見出し文字列に置き換えられます.
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177
|
+
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178
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+
### 別行見出し
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179
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+
`\DeclareBlockHeading`で作成します.`\<命令名>*[running head]{見出し文字列}[副題]`という書式の命令を作成します.設定は以下の通り.
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180
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+
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181
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+
#### 書式関連
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182
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+
* `font=<命令>`:見出しのフォントを指定します.
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183
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+
* `subtitle_font=<命令>`:副題のフォントを指定します.
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184
|
+
* `label_format=<命令>`:ラベルのフォーマットを指定します.`label_format={第\thechapter 章}`などのようにします.
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185
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+
* `subtitle_format=<命令>`:副題のフォーマットを指定します.`subtitle_format={「#1」}`のようにします.`#1`が副題自身になります.
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186
|
+
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187
|
+
#### インデント関連
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188
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+
* `align=[left/center/right]`:見出し位置の横方向の配置場所を指定します.
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189
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+
* `indent=<寸法>`:見出し全体の字下げ量を指定します.
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190
|
+
* `end_indent=<寸法>`:見出し全体の字上げ量を指定します.
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191
|
+
* `after_label_space=<寸法>`:ラベル後,見出し文字列までの空きを指定します.
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192
|
+
* `second_heading_text_indent=[<寸法>/{<寸法>,<寸法>}]`:見出し文字列の二行目以降のインデントを指定します.一行目の頭を起点として指定しますが,`second_heading_text_indent=*1\zw`のように先頭に`*`をつけるとラベルの頭を起点としての指定になります.(ラベルがない時は一行目の頭が起点.)また,`second_heading_text_indent={<ラベルがある時>,<ラベルがない時>}`という指定をすると,ラベルの有無に応じて値を変更することができます.`<ラベルがある時>`の指定ではやはり`*`を使うことができます.
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193
|
+
* `subtitle_indent=<寸法>`:副題のインデント量を指定します.見出し文字列の一行目を起点として指定します.
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194
|
+
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195
|
+
#### その他
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196
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+
* `subtitle_break=[true/false]`:見出し文字列と副題の間を改行するか指定します.
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197
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+
* `allowbreak_if_evenpage=[true/false]`:見出しが偶数ページにあった場合,その直後の改ページを許可します.
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198
|
+
* `pagebreak=[clearpage/cleardoublepage/clearcolumn/nariyuki/begin_with_odd_page/begin_with_even_page]`:見出し直前の改ページを指定します.それぞれ,改ページ,`\cleardoublepage`実行,改段,なりゆき,奇数ページ開始,偶数ページ開始,です.
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199
|
+
* `afterindent=[true/false]`:見出し直後の段落の字下げを行うかを指定します.
|
200
|
+
* `column_spanning=[true/false]`: 段抜きの見出しにします.`pagebreak=nariyuki`または`pagebreak=clearcolumn`の時には無視されます.
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201
|
+
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202
|
+
#### 行取り
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203
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+
行取りの指定は以下のいずれかの方法で行うことができます.
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204
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+
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205
|
+
* 行数を指定し,その中央に配置します.`lines=<自然数値>`により行数を指定します.`before_lines=<自然数値>`や`after_lines=<自然数値>`により,さらに前後に追加する行数を指定します.たとえば`lines=3,after_lines=1`とすれば,四行の中に配置され,前の空きよりも後ろの空きの方が一行分大きくなります.`before_lines`により指定された空きはページ頭には入りませんが,`before_lines=*1`というように`*`を先頭につけると常に入るようになります.
|
206
|
+
* 行数と,前後いずれかの空きを指定します.`lines=<自然数値>`により行数を,`before_space=<寸法>`または`after_space=<寸法>`のいずれかの指定によりそれぞれ前または後ろの空きを指定します.
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207
|
+
* 前後の空きを指定します.`before_space=<寸法>`および`after_space=<寸法>`を指定します.
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208
|
+
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209
|
+
#### 連続して掲げる見出しの行取り
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210
|
+
``\SetBlockHeadingSpaces``により,見出しが連続して掲げられたときの行取りを設定することができます.``\SetBlockHeadingSpaces``は
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211
|
+
|
212
|
+
```latex
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213
|
+
\SetBlockHeadingSpaces{
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214
|
+
{_part{lines=3,before_lines=1},_section{lines=2},_subsection{lines=2}}
|
215
|
+
[lines=5]{_section,23pt,_subsection,16pt}
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216
|
+
}
|
217
|
+
```
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218
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+
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219
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+
のように使います.この意味は次の通りです.
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220
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+
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221
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+
* `\part`,`\section`,`\subsection`という順番で見出しが掲げられていて,その前後が見出しでない場合は,`\part`は三行取り+前に一行空き,`\section`と`\subsection`は二行取りとなります.
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222
|
+
* `\section`,`\subsection`という順番で見出しが掲げられていて,その前後が見出しでない場合は,全体で五行取りとし,`\section`と`\subsection`との間に`23pt`の空き,`\subsection`の後に`16pt`の空きを入れます.
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223
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+
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224
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+
個々の設定は以下のようになります.
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225
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+
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226
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+
* 各々の``{}``内には``_<見出し命令名>``か``<寸法>``をカンマ区切りで並べます.
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227
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+
* 先頭に``[]``で囲まれた設定を追加できます.これは連続して掲げられた見出し全体への設定となります.``lines / before_lines / after_lines / before_space / after_space``が利用可能です.各々の意味は上述の行取り指定と同じです.
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228
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+
* 寸法はそのまま空き量を表します.
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229
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+
* ``_<見出し命令名>``の後に``{}``で囲まれた設定を追加することで,その見出しの空き量を設定します.設定しない場合は前後に空きが入りません.
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230
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+
* 見出しに対する``{}``で囲まれた設定内では,``lines / before_lines / after_lines / before_space / after_space``が利用可能です.各々の意味は上述の行取り指定と同じです.
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231
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+
* ``{}``で囲まれた部分を``*``のみにすると(例えば``_section{*}``とすると)単独で掲げた場合と同じ設定を使います.
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232
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+
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233
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+
なお,見出しが連続しているかは単純に別行見出しの命令が並んで書かれているかのみで判断します.従ってそれらの命令間に出力には関係しないような命令が挟まっていたとしても,見出しが連続して掲げられているとは判断されません.ただし,見出し命令の間に空白,改行または`\label[<オプション>]{<引数>}…{<引数>}`という形のもののみが挟まれている場合は,見出しが連続していると判断されます.
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234
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+
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235
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+
### 同行見出し
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236
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+
`\DeclareRuninHeading`で作成します.通常の文書クラスにおける`\section`と同様の,`\<命令名>*[running head]{見出し文字列}`という書式の命令が作成されます.設定は以下の通り.
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237
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+
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238
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+
* `font=<命令>`:見出しのフォントを指定します.
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239
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+
* `indent=<寸法>` 見出し文字列全体の字下げ量を指定します.
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240
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+
* `after_label_space=<寸法>`:ラベル後,見出し文字列までの空きを指定します.
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241
|
+
* `label_format=<命令>`:ラベルのフォーマットを指定します.`label_format={\theparagraph}`などのようにします.
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242
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+
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243
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+
### 窓見出し
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244
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+
`\DeclareCutinHeading`で作成します.`\<命令名>{見出し文字列}`という書式の命令を作成します.設定は以下の通り.
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245
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+
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246
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+
* `font=<命令>`:見出しのフォントを指定します.
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247
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+
* `indent=<寸法>`:見出し全体の字下げ量を指定します.
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248
|
+
* `after_space=<寸法>`:見出しと本文との間の空きを指定します.
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249
|
+
* `onelinemax=<寸法>`, `twolinemax=<寸法>`:見出し文字列の長さが`onelinemax`以下ならば一行で,`twolinemax`以下ならば二行で窓見出しを出力します.それ以上の場合は三行です.デフォルトはそれぞれ6文字,20文字の長さ.
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250
|
+
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251
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+
### `\ModifyHeading`
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252
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+
既に(上のどれかを使い)定義された見出し命令の設定を変更します.たとえば
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253
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+
```latex
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254
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+
\ModifyHeading{section}{lines=10}
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255
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+
```
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256
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+
とすると,`\section`のフォントなどの設定はそのままに,行取りのみが10行に変更されます.見出しの種類を変更することはできません.
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257
|
+
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258
|
+
### `\SaveHeading`
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259
|
+
見出し命令の定義を待避します.
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260
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+
```latex
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261
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+
\SaveHeading{section}{\restoresection} % \sectionの中身を\restoresectionに待避.
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262
|
+
\RenewBlockHeading{section}{1}{font=……} % \sectionを新しく定義する.
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263
|
+
……
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264
|
+
\restoresection % \sectionの中身を元に戻す.
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265
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+
```
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266
|
+
のように使います.
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267
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+
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268
|
+
## ページスタイル
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269
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+
```
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270
|
+
\DeclarePageStyle{<ページスタイル名>}{<設定>}
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271
|
+
```
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272
|
+
によりページスタイルを定義することができます.`<設定>`はkeyval形式です.定義したページスタイルは`\pagestyle`で適用できます.設定は以下の通り.
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273
|
+
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274
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+
* `yoko`:横書きで上下に出力します.デフォルト.
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275
|
+
* `tate`:縦書きで小口側に出力します.
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276
|
+
* `font=<命令>`:柱とノンブルのフォントを指定します.
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277
|
+
* `running_head_position`, `nombre_position`:柱とノンブルの位置を指定します.`yoko`か`tate`のどちらが指定されているかで挙動が変わります.
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278
|
+
- `yoko`指定時:`top-left`のように指定できます.`top / bottom / center / left / right / gutter / fore_edge`が使えます.`gutter`はのど,`fore_edge`は小口です.`left`,`right`の指定は奇数ページに対するものです.`twoside`が指定されている場合,偶数ページはその逆になります.
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279
|
+
- `tate`指定時:`<寸法>`が指定できます.`running_head_position`は柱の天からの下げ量を,`nombre_position`はノンブルの地からの上げ量を指定します.
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280
|
+
* `nombre=<書式>`:出力するノンブルを指定します.デフォルトは`\thepage`.
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281
|
+
* `odd_running_head=<書式>`,`even_running_head=<書式>`:それぞれ奇数ページ,偶数ページの柱を指定します.`_section`のように`_`から始まる名前を指定すると,対応する見出しを出力します.(`_section`だと現在の`\section`を出力する.)
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282
|
+
* `mark_format={[odd=<書式>/even=<書式>/_<見出し命令名>=<書式>],...}`:見出しを柱に出力する際のフォーマットを指定します.`mark_format={_section={節\thesection:#1},_chapter={第\thechapter 章\quad #1}}`のように指定します.見出し命令名の代わりに`odd`や`even`も指定でき,それぞれ奇数ページ/偶数ページの柱の書式になります.`\pagestyle`実行時に`\sectionmark`等を定義することで実現しています.
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283
|
+
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284
|
+
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285
|
+
`\NewPageStyle`,`\RenewPageStyle`,`\ProvidePageStyle`もあります.`\ModifyPageStyle`により既存のページスタイルを改変することが可能です.
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286
|
+
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287
|
+
## JFM
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288
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+
以下のような独自のJFMを使います.パッケージによっては,パッケージ独自のJFMや,また標準のJFMを使うように設定がし直される場合があります.例えばLuaTeX-jaに付属するluatexja-presetパッケージは通常LuaTeX-ja標準のJFMを使います.本クラスファイルで使っているJFMを使う場合は,
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289
|
+
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290
|
+
```LaTeX
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291
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+
\usepackage[jfm_yoko=jlreq,jfm_tate=jlreqv,hiragino-pron]{luatexja-preset}
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292
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+
```
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293
|
+
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294
|
+
のようにオプションで指定する必要があります.
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295
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+
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296
|
+
### pLaTeX/upLaTeXの場合
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297
|
+
JFMの名前は次の通りです.`[]`で囲まれている文字は設定により入ったり入らなかったりします.
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298
|
+
```
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299
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+
[u][b][z]jlreq[g][-v]
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300
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+
```
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301
|
+
それぞれの文字は以下の場合に入ります.
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302
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+
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303
|
+
* `u`: upLaTeX利用時
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304
|
+
* `b`: ぶら下げ組み利用時.(クラスオプションに`hanging_punctuation`が指定された時.)
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305
|
+
* `z`: 行頭における開き括弧類の前の空きが,段落開始時が全角二分,折り返し時が二分の時.(クラスオプションに`open_bracket_pos=zenkakunibu_nibu`が指定された時.)
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306
|
+
* `g`: ゴシック用フォント.
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307
|
+
* `-v`: 縦書き用.
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308
|
+
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309
|
+
例えば,ぶら下げ組みを利用せず,クラスオプションに`open_bracket_pos=zenkakunibu_nibu`が指定されいてるソースをpLaTeXで処理した場合,横書き明朝体には`zjlreq`という名前のJFMが使われます.
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310
|
+
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311
|
+
### LuaLaTeXの場合
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312
|
+
* 横書き用のJFMは`jlreq`
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313
|
+
* 縦書き用のJFMは`jlreqv`
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314
|
+
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315
|
+
となります.ゴシックも同じJFMを使います.
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316
|
+
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317
|
+
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318
|
+
## その他
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319
|
+
* クラスオプション`jlreq_notes`が渡されると,日本語組版処理の記述と矛盾する設定が行われた場合に通知がされます.
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320
|
+
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321
|
+
## ライセンス
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322
|
+
このパッケージは二条項BSDライセンスの元で配布されています.詳しくは[LICENSE](LICENSE)をご覧ください.
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323
|
+
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324
|
+
## 履歴
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325
|
+
* 2017-02-08
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326
|
+
- 最初のバージョン.
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327
|
+
* 2017-02-17
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328
|
+
- いくつかバグを修正.
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329
|
+
- クラスオプション/`\jlreqsetup`にいくつかのキーを追加/変更.
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330
|
+
- `abstract`環境を実装.
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331
|
+
- パッケージを読み込んでいるだけのはやめた.
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332
|
+
* 2017-03-14
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333
|
+
- いくつかバグを修正.
|
334
|
+
- 和文ファミリを欧文ファミリに従属させるようにした.
|
335
|
+
- `\DeclareBlockHeading`にオプションをたくさん追加.
|
336
|
+
- quote環境などを調整するオプションを追加.
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337
|
+
* 2017-03-20
|
338
|
+
- バグ修正.
|
339
|
+
- `\footnote / \sidenote / \endnote`の周りに必要ならば空白を挿入するようにした.
|
340
|
+
* 2017-04-04
|
341
|
+
- バグ修正.
|
342
|
+
- `\DeclarePageStyle`に`tate`と`font`オプションを追加.
|
343
|
+
* 2017-04-29
|
344
|
+
- バグ修正
|
345
|
+
- `jafontsize`と`jafontscale`をクラスオプションに,また`\jafontsize`を追加.
|
346
|
+
- `\tatechuyoko`を追加.
|
347
|
+
- クラスオプション`jlreq_warnings`を`jlreq_notes`に変更.
|
348
|
+
- いくつかのクラスオプションを`\jlreqsetup`に移動.
|
349
|
+
- いくつかのオプションを`\jlreqsetup`に追加.
|
350
|
+
- クラスオプションの`paper={<縦>,<横>}`を`paper={<横>,<縦>}`に変更.
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351
|
+
* 2017-06-11
|
352
|
+
- `plext` / `lltjext`の読み込みを中止.
|
353
|
+
- `\DeclareBlockHeading`に`align`を追加.`indent=center`や`end_indent=center`を廃止.
|
354
|
+
- 一部の`\kcatcode` (upLaTeX時) を変更.
|
355
|
+
* 2017-08-13
|
356
|
+
- `column_spanning`を`\DeclareBlockHeading`に追加.
|
357
|
+
- ページレイアウトにおける「本文の長さ」に傍注の長さを入れるようにした.
|
358
|
+
- 傍注の長さのデフォルトを0とした.
|
359
|
+
- 傍注の長さが0の時には`\sidenote`を定義しないようにした.
|
360
|
+
- 和文間隔を挿入する命令を追加.
|
361
|
+
* 2017-08-29
|
362
|
+
- 縦書きでも著者名が横書きで出てしまうバグを修正.
|
363
|
+
* 2017-11-23
|
364
|
+
- バグ修正
|
365
|
+
- `\SetBlockHeadingSpaces`を追加.
|
366
|
+
- `\contentsname` と `\indexname`に入っていたスペースを削除.
|
367
|
+
* 2017-12-02
|
368
|
+
- バグ修正
|
369
|
+
* 2017-12-22
|
370
|
+
- JFMを改善.
|
371
|
+
- 別行見出しの間の`\label`の検出方法を変更.
|
372
|
+
- `\theequation`,`\thefigure`,`\thetable`に章番号を追加.
|
373
|
+
* 2018-02-01
|
374
|
+
- 縦書きの傍注は奇数ページにのみ出るようにした(改善の余地ありかも).
|
375
|
+
- LuaTeX時に`\fnixbottomtrue`を追加.
|
376
|
+
- キャプション関係のオプションを`\jlreqsetup`に追加.
|
377
|
+
- `itemization_beforeafter_space`を拡張.
|
378
|
+
- バグ修正.
|
379
|
+
* 2018-04-11
|
380
|
+
- 縦書き二段組みの傍注を下段に出すようにした.
|
381
|
+
- `begin_widh_(odd|even)_page`を`\DeclareBlockHeading`に追加.
|
382
|
+
- `\labelenumi`らをjarticleなどにあわせた.
|
383
|
+
- `column_gap`クラスオプションを使うとコンパイルできなかったバグ修正.
|
384
|
+
- `mark_format`を`\DeclarePageStyle`に追加.
|
385
|
+
|
386
|
+
|
387
|
+
--------------
|
388
|
+
Noriyuki Abe
|
389
|
+
https://github.com/abenori/jlreq
|
@@ -0,0 +1,69 @@
|
|
1
|
+
---
|
2
|
+
title: 山月記
|
3
|
+
author: 中島 敦
|
4
|
+
publisher: 青空文庫
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5
|
+
pageDirection: rtl
|
6
|
+
license: public domain
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7
|
+
---
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8
|
+
|
9
|
+
# 山月記
|
10
|
+
|
11
|
+
{隴西|ろうさい}の{李徴|りちょう}は博学{才穎|さいえい}、天宝の末年、若くして名を{虎榜|こぼう}に連ね、ついで{江南尉|こうなんい}に補せられたが、性、{狷介|けんかい}、{自|みずか}ら{恃|たの}むところ{頗|すこぶ}る厚く、{賤吏|せんり}に甘んずるを{潔|いさぎよ}しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、{故山|こざん}、{虢略|かくりゃく}に{帰臥|きが}し、人と{交|まじわり}を絶って、ひたすら詩作に{耽|ふけ}った。下吏となって長く{膝|ひざ}を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に{遺|のこ}そうとしたのである。しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を{逐|お}うて苦しくなる。李徴は{漸|ようや}く{焦躁|しょうそう}に駆られて来た。この{頃|ころ}からその{容貌|ようぼう}も{峭刻|しょうこく}となり、肉落ち骨{秀|ひい}で、眼光のみ{徒|いたず}らに{炯々|けいけい}として、{曾|かつ}て進士に{登第|とうだい}した頃の{豊頬|ほうきょう}の美少年の{俤|おもかげ}は、{何処|どこ}に求めようもない。数年の後、貧窮に{堪|た}えず、妻子の衣食のために{遂|つい}に節を屈して、再び東へ赴き、一地方官吏の職を奉ずることになった。一方、これは、{己|おのれ}の詩業に半ば絶望したためでもある。曾ての同輩は既に{遥|はる}か高位に進み、彼が昔、鈍物として{歯牙|しが}にもかけなかったその連中の下命を拝さねばならぬことが、往年の{儁才|しゅんさい}李徴の自尊心を{如何|いか}に{傷|きずつ}けたかは、想像に{難|かた}くない。彼は{怏々|おうおう}として楽しまず、{狂悖|きょうはい}の性は{愈々|いよいよ}抑え{難|がた}くなった。一年の後、公用で旅に出、{汝水|じょすい}のほとりに宿った時、遂に発狂した。{或|ある}夜半、急に顔色を変えて寝床から起上ると、何か訳の分らぬことを叫びつつそのまま下にとび下りて、{闇|やみ}の中へ{駈出|かけだ}した。彼は二度と{戻|もど}って来なかった。附近の山野を捜索しても、何の手掛りもない。その後李徴がどうなったかを知る者は、{誰|だれ}もなかった。
|
12
|
+
|
13
|
+
翌年、{監察御史|かんさつぎょし}、{陳郡|ちんぐん}の{袁傪|えんさん}という者、勅命を奉じて{嶺南|れいなん}に{使|つかい}し、{途|みち}に{商於|しょうお}の地に宿った。次の朝{未|ま}だ暗い{中|うち}に出発しようとしたところ、駅吏が言うことに、これから先の道に{人喰虎|ひとくいどら}が出る{故|ゆえ}、旅人は白昼でなければ、通れない。今はまだ朝が早いから、今少し待たれたが{宜|よろ}しいでしょうと。袁傪は、しかし、{供廻|ともまわ}りの多勢なのを恃み、駅吏の言葉を{斥|しりぞ}けて、出発した。残月の光をたよりに林中の草地を通って行った時、果して一匹の{猛虎|もうこ}が{叢|くさむら}の中から躍り出た。虎は、あわや袁傪に躍りかかるかと見えたが、{忽|たちま}ち身を{飜|ひるがえ}して、元の叢に隠れた。叢の中から人間の声で「あぶないところだった」と繰返し{呟|つぶや}くのが聞えた。その声に袁傪は聞き{憶|おぼ}えがあった。{驚懼|きょうく}の中にも、彼は{咄嗟|とっさ}に思いあたって、叫んだ。「その声は、我が友、李徴子ではないか?」袁傪は李徴と同年に進士の第に登り、友人の少かった李徴にとっては、最も親しい友であった。温和な袁傪の性格が、{峻峭|しゅんしょう}な李徴の性情と衝突しなかったためであろう。
|
14
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+
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15
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+
叢の中からは、{暫|しばら}く返辞が無かった。しのび泣きかと思われる{微|かす}かな声が時々{洩|も}れるばかりである。ややあって、低い声が答えた。「如何にも自分は隴西の李徴である」と。
|
16
|
+
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17
|
+
袁傪は恐怖を忘れ、馬から下りて叢に近づき、{懐|なつ}かしげに{久闊|きゅうかつ}を叙した。そして、{何故|なぜ}叢から出て来ないのかと問うた。李徴の声が答えて言う。自分は今や異類の身となっている。どうして、おめおめと{故人|とも}の前にあさましい姿をさらせようか。かつ又、自分が姿を現せば、必ず君に{畏怖嫌厭|いふけんえん}の情を起させるに決っているからだ。しかし、今、図らずも故人に{遇|あ}うことを得て、{愧赧|きたん}の念をも忘れる程に懐かしい。どうか、ほんの暫くでいいから、我が醜悪な今の外形を{厭|いと}わず、曾て君の友李徴であったこの自分と話を交してくれないだろうか。
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18
|
+
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19
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+
後で考えれば不思議だったが、その時、袁傪は、この超自然の怪異を、実に素直に{受容|うけい}れて、少しも怪もうとしなかった。彼は部下に命じて行列の進行を{停|と}め、自分は叢の{傍|かたわら}に立って、見えざる声と対談した。都の{噂|うわさ}、旧友の消息、袁傪が現在の地位、それに対する李徴の祝辞。青年時代に親しかった者同志の、あの隔てのない語調で、それ{等|ら}が語られた後、袁傪は、李徴がどうして今の身となるに至ったかを{訊|たず}ねた。草中の声は次のように語った。
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20
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今から一年程前、自分が旅に出て汝水のほとりに泊った夜のこと、一睡してから、ふと{眼|め}を覚ますと、戸外で誰かが我が名を呼んでいる。声に応じて外へ出て見ると、声は闇の中から{頻|しき}りに自分を招く。覚えず、自分は声を追うて走り出した。無我夢中で駈けて行く中に、{何時|いつ}しか途は山林に入り、しかも、知らぬ間に自分は左右の手で地を{攫|つか}んで走っていた。何か{身体|からだ}中に力が{充|み}ち満ちたような感じで、軽々と岩石を跳び越えて行った。気が付くと、手先や{肱|ひじ}のあたりに毛を生じているらしい。少し明るくなってから、谷川に臨んで姿を映して見ると、既に虎となっていた。自分は初め眼を信じなかった。次に、これは夢に違いないと考えた。夢の中で、これは夢だぞと知っているような夢を、自分はそれまでに見たことがあったから。どうしても夢でないと悟らねばならなかった時、自分は{茫然|ぼうぜん}とした。そうして{懼|おそ}れた。全く、どんな事でも起り得るのだと思うて、深く懼れた。しかし、何故こんな事になったのだろう。分らぬ。全く何事も我々には{判|わか}らぬ。理由も分らずに押付けられたものを大人しく受取って、理由も分らずに生きて行くのが、我々生きものの*さだめ*だ。自分は{直|す}ぐに死を{想|おも}うた。しかし、その時、眼の前を一匹の{兎|うさぎ}が駈け過ぎるのを見た途端に、自分の中の*人間*は忽ち姿を消した。再び自分の中の*人間*が目を覚ました時、自分の口は兎の血に{塗|まみ}れ、あたりには兎の毛が散らばっていた。これが虎としての最初の経験であった。それ以来今までにどんな所行をし続けて来たか、それは到底語るに忍びない。ただ、一日の中に必ず数時間は、人間の心が{還|かえ}って来る。そういう時には、曾ての日と同じく、人語も{操|あやつ}れれば、複雑な思考にも堪え得るし、{経書|けいしょ}の章句を{誦|そら}んずることも出来る。その人間の心で、虎としての{己|おのれ}の{残虐|ざんぎゃく}な{行|おこない}のあとを見、己の運命をふりかえる時が、最も情なく、恐しく、{憤|いきどお}ろしい。しかし、その、人間にかえる数時間も、日を経るに従って次第に短くなって行く。今までは、どうして虎などになったかと怪しんでいたのに、この間ひょいと気が付いて見たら、{己|おれ}はどうして以前、人間だったのかと考えていた。これは恐しいことだ。今少し{経|た}てば、{己|おれ}の中の人間の心は、獣としての習慣の中にすっかり{埋|うも}れて消えて{了|しま}うだろう。ちょうど、古い宮殿の{礎|いしずえ}が次第に土砂に埋没するように。そうすれば、しまいに己は自分の過去を忘れ果て、一匹の虎として狂い廻り、今日のように途で君と出会っても{故人|とも}と認めることなく、君を裂き{喰|くろ}うて何の悔も感じないだろう。一体、獣でも人間でも、もとは何か{他|ほか}のものだったんだろう。初めはそれを憶えているが、次第に忘れて了い、初めから今の形のものだったと思い込んでいるのではないか? いや、そんな事はどうでもいい。己の中の人間の心がすっかり消えて了えば、恐らく、その方が、己は*しあわせ*になれるだろう。だのに、己の中の人間は、その事を、この上なく恐しく感じているのだ。ああ、全く、どんなに、恐しく、{哀|かな}しく、切なく思っているだろう! 己が人間だった記憶のなくなることを。この気持は誰にも分らない。誰にも分らない。己と同じ身の上に成った者でなければ。ところで、そうだ。己がすっかり人間でなくなって了う前に、一つ頼んで置きたいことがある。
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袁傪はじめ一行は、息をのんで、{叢中|そうちゅう}の声の語る不思議に聞入っていた。声は続けて言う。
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他でもない。自分は元来詩人として名を成す積りでいた。しかも、業{未|いま}だ成らざるに、この運命に立至った。曾て作るところの詩数百{篇|ぺん}、{固|もと}より、まだ世に行われておらぬ。遺稿の所在も{最早|もはや}判らなくなっていよう。ところで、その中、今も{尚|なお}{記誦|きしょう}せるものが数十ある。これを我が{為|ため}に伝録して{戴|いただ}きたいのだ。何も、これに{仍|よ}って一人前の詩人{面|づら}をしたいのではない。作の巧拙は知らず、とにかく、産を破り心を狂わせてまで自分が{生涯|しょうがい}それに執着したところのものを、一部なりとも後代に伝えないでは、死んでも死に切れないのだ。
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袁傪は部下に命じ、筆を執って叢中の声に{随|したが}って書きとらせた。李徴の声は叢の中から朗々と響いた。長短{凡|およ}そ三十篇、格調高雅、意趣卓逸、一読して作者の才の非凡を思わせるものばかりである。しかし、袁傪は感嘆しながらも{漠然|ばくぜん}と次のように感じていた。{成程|なるほど}、作者の素質が第一流に属するものであることは疑いない。しかし、このままでは、第一流の作品となるのには、{何処|どこ}か(非常に微妙な点に{於|おい}て)欠けるところがあるのではないか、と。
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旧詩を吐き終った李徴の声は、突然調子を変え、自らを{嘲|あざけ}るか{如|ごと}くに言った。
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{羞|はずか}しいことだが、今でも、こんな*あさましい*身と成り果てた今でも、{己|おれ}は、己の詩集が{長安|ちょうあん}風流人士の机の上に置かれている様を、夢に見ることがあるのだ。{岩窟|がんくつ}の中に横たわって見る夢にだよ。{嗤|わら}ってくれ。詩人に成りそこなって虎になった哀れな男を。(袁傪は昔の青年李徴の{自嘲癖|じちょうへき}を思出しながら、哀しく聞いていた。)そうだ。お笑い草ついでに、今の{懐|おもい}を即席の詩に述べて見ようか。この虎の中に、まだ、曾ての李徴が生きている*しるし*に。
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袁傪は又下吏に命じてこれを書きとらせた。その詩に言う。
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偶因狂疾成殊類 災患相仍不可逃
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今日爪牙誰敢敵 当時声跡共相高
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我為異物蓬茅下 君已乗軺気勢豪
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此夕渓山対明月 不成長嘯但成嘷
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時に、残月、光{冷|ひや}やかに、白露は地に{滋|しげ}く、樹間を渡る冷風は既に暁の近きを告げていた。人々は最早、事の奇異を忘れ、粛然として、この詩人の{薄倖|はっこう}を嘆じた。李徴の声は再び続ける。
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{何故|なぜ}こんな運命になったか判らぬと、先刻は言ったが、しかし、考えように{依|よ}れば、思い当ることが全然ないでもない。人間であった時、{己|おれ}は努めて人との{交|まじわり}を避けた。人々は己を{倨傲|きょごう}だ、尊大だといった。実は、それが{殆|ほとん}ど{羞恥心|しゅうちしん}に近いものであることを、人々は知らなかった。{勿論|もちろん}、曾ての{郷党|きょうとう}の鬼才といわれた自分に、自尊心が無かったとは{云|い}わない。しかし、それは{臆病|おくびょう}な自尊心とでもいうべきものであった。己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って{切磋琢磨|せっさたくま}に努めたりすることをしなかった。かといって、又、己は俗物の間に{伍|ご}することも{潔|いさぎよ}しとしなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との{所為|せい}である。{己|おのれ}の{珠|たま}に{非|あら}ざることを{惧|おそ}れるが{故|ゆえ}に、{敢|あえ}て刻苦して{磨|みが}こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、{碌々|ろくろく}として{瓦|かわら}に伍することも出来なかった。{己|おれ}は次第に世と離れ、人と遠ざかり、{憤悶|ふんもん}と{慙恚|ざんい}とによって{益々|ますます}{己|おのれ}の内なる臆病な自尊心を飼い*ふとらせる*結果になった。人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。{己|おれ}の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。今思えば、全く、己は、己の{有|も}っていた{僅|わず}かばかりの才能を空費して了った訳だ。人生は何事をも{為|な}さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を{弄|ろう}しながら、事実は、才能の不足を{暴露|ばくろ}するかも知れないとの{卑怯|ひきょう}な{危惧|きぐ}と、刻苦を{厭|いと}う怠惰とが己の{凡|すべ}てだったのだ。己よりも遥かに乏しい才能でありながら、それを専一に磨いたがために、堂々たる詩家となった者が幾らでもいるのだ。虎と成り果てた今、己は{漸|ようや}くそれに気が付いた。それを思うと、己は今も胸を{灼|や}かれるような悔を感じる。己には最早人間としての生活は出来ない。たとえ、今、己が頭の中で、どんな優れた詩を作ったにしたところで、どういう手段で発表できよう。まして、己の頭は{日毎|ひごと}に虎に近づいて行く。どうすればいいのだ。己の空費された過去は? 己は{堪|たま}らなくなる。そういう時、己は、向うの山の頂の{巖|いわ}に上り、{空谷|くうこく}に向って{吼|ほ}える。この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。己は昨夕も、{彼処|あそこ}で月に向って{咆|ほ}えた。誰かにこの苦しみが分って{貰|もら}えないかと。しかし、獣どもは己の声を聞いて、{唯|ただ}、{懼|おそ}れ、ひれ伏すばかり。山も{樹|き}も月も露も、一匹の虎が怒り狂って、{哮|たけ}っているとしか考えない。天に躍り地に伏して嘆いても、誰一人己の気持を分ってくれる者はない。ちょうど、人間だった頃、己の傷つき{易|やす}い内心を誰も理解してくれなかったように。己の毛皮の{濡|ぬ}れたのは、夜露のためばかりではない。
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漸く{四辺|あたり}の暗さが薄らいで来た。木の間を伝って、{何処|どこ}からか、{暁角|ぎょうかく}が哀しげに響き始めた。
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最早、別れを告げねばならぬ。酔わねばならぬ時が、(虎に還らねばならぬ時が)近づいたから、と、李徴の声が言った。だが、お別れする前にもう一つ頼みがある。それは我が妻子のことだ。{彼等|かれら}は{未|ま}だ{虢略|かくりゃく}にいる。固より、己の運命に就いては知る{筈|はず}がない。君が南から帰ったら、己は既に死んだと彼等に告げて貰えないだろうか。決して今日のことだけは明かさないで欲しい。厚かましいお願だが、彼等の孤弱を{憐|あわ}れんで、今後とも{道塗|どうと}に{飢凍|きとう}することのないように計らって戴けるならば、自分にとって、{恩倖|おんこう}、これに過ぎたるは{莫|な}い。
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言終って、叢中から{慟哭|どうこく}の声が聞えた。袁もまた涙を{泛|うか}べ、{欣|よろこ}んで李徴の意に{副|そ}いたい{旨|むね}を答えた。李徴の声はしかし{忽|たちま}ち又先刻の自嘲的な調子に{戻|もど}って、言った。
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本当は、{先|ま}ず、この事の方を先にお願いすべきだったのだ、己が人間だったなら。飢え凍えようとする妻子のことよりも、{己|おのれ}の乏しい詩業の方を気にかけているような男だから、こんな獣に身を{堕|おと}すのだ。
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そうして、{附加|つけくわ}えて言うことに、袁傪が嶺南からの帰途には決してこの{途|みち}を通らないで欲しい、その時には自分が酔っていて{故人|とも}を認めずに襲いかかるかも知れないから。又、今別れてから、前方百歩の所にある、あの丘に上ったら、{此方|こちら}を振りかえって見て貰いたい。自分は今の姿をもう一度お目に掛けよう。勇に誇ろうとしてではない。我が醜悪な姿を示して、{以|もっ}て、再び{此処|ここ}を過ぎて自分に会おうとの気持を君に起させない為であると。
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袁傪は叢に向って、{懇|ねんご}ろに別れの言葉を述べ、馬に上った。叢の中からは、又、{堪|た}え得ざるが如き{悲泣|ひきゅう}の声が{洩|も}れた。袁傪も幾度か叢を振返りながら、涙の中に出発した。
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一行が丘の上についた時、彼等は、言われた通りに振返って、先程の林間の草地を{眺|なが}めた。忽ち、一匹の虎が草の茂みから道の上に躍り出たのを彼等は見た。虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声{咆哮|ほうこう}したかと思うと、又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。
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底本:「李陵・山月記」新潮文庫、新潮社
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1969(昭和44)年9月20日発行
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入力:平松大樹
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校正:林めぐみ
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1998年11月12日公開
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2010年11月2日修正
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青空文庫作成ファイル:
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このファイルは、インターネットの図書館、[青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)](http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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(原文: [https://www.aozora.gr.jp/cards/000119/card624.html](https://www.aozora.gr.jp/cards/000119/card624.html))
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